民法11条~14条 被保佐人 【行政書士試験対策】

民法総則

民法11~14条

制限行為能力者の被保佐人と保佐人についてです。組み立てとして成年被後見人と同じような順番でくみたてられています。違いはその事理弁識能力に応じた制限内容と権利義務です。

 


民法 第11条

条文

 

解説

11条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。

 

赤字の部分が特に重要です。

請求権の有る者は同じですが、但し書きにより事理弁識能力を欠く者にはこの審判が出来ません。権利義務の制限には程度に応じた裁判所の審判が重要になります。

そして

本人以外の者の請求に本人の同意は必要ありません。

 

民法 第12条

条文

 

解説

12条 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

 

これも明確です。

成年被後見人と同じように裁判所の審判を受けた者と言う規定がある以上、自称は無いという事です。

 

民法 第13条 

条文

 

解説

13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

 

同意を得なければならない項目を挙げている事で原則は同意が不要であるとしている。

原則同意が不要と言う事は同意不要な事項は取り消しが出来ない。

ここに制限行為能力者についての規定で大きな線引きがされています。

第9条但し書き:日用品の購入その他日常生活に関する行為→同意不要

 

同意が必要な事項が以下です。

 元本を領収し、又は利用すること。

元本を返してもらうと利息を受けとれ無くなる為それが被保佐人の不利益と判断される。利息だけは同意なしに受け取れます

 借財又は保証をすること。

金銭を借りる以外も含みます。金銭債権の消滅時効の放棄→新たな借財と考えられます。

消滅時効完成後の債務承認→これも支払う必要がないにもかかわらず債務を負う事になります

 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

この重要な財産に自動車が含まれています

 訴訟行為をすること。

原告として相手を訴えることは単独では出来ません。

離婚や認知に関することについては保佐人の同意は不要で単独で裁判含めて可能です。

 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。

贈与する:同意必要

贈与受ける:同意不要

和解:同意必要(内容によっては被保佐人の不利益になる場合が有る為)

 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

贈与や遺贈を断るのは利益を失う事と同意です。保佐人の同意が必要です。

負担付の場合はその負担が不利益にならないか?と言う事を考えなければなりません。

税金が発生する場合はこれに含まれ同意が必要です。

 

贈与に関しては、それが被保佐人の利益となるか?また利益の他に不利益を含む可能性があるかが判断のポイントです。同じ贈与と言う言葉でも往復で考えた場合、違う判断になるがありますので注意が必要です。

 新築、改築、増築又は大修繕をすること。

 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。

短期賃貸借 山林10年・土地5年・建物3年・動産6か月以内なら単独で契約出来る

 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

これは親(法定代理人)が被保佐人だったという場合がわかりやすいでしょう。同意が必要です

 

 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

 

一~十までに加えて同意を必要とする行為を審判出来る

この審判には本人の同意が必要です。

 

 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

 

原則:取消し出来ないが各号に該当する物で同意が無ければ取り消せる→同意を得た行為は取り消すことが出来ない

 

民法 第14条

条文

 

解説

14条 第十一条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。

 

保佐開始の審判に規定する原因が消滅した特は取り消さなければならない

 

成年被後見人と同じように原因が消滅してそのままには出来ません。

 

 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

 

前条第2項の審判とは追加で審判した同意が必要な事項です。

 

追加で審判した事項も同じように取り消すことが出来ます。

 

関連する条項集

重要ポイント(親族編)

親族編に大き目のボリュームで関連する条項があります。

解説

前提として保佐開始の審判に本人の同意不要。13条1項1~10までの事項の同意権は付与されている。

ここからさらに同意権や代理権を追加したい場合は以下のようになる。

①同意権追加の審判に本人の同意が必要

②保佐人に代理権を付与する審判が出来る→重要です。本来代理権はありません。法定代理人の地位はありません。

③代理権の審判は本人の同意が必要

保佐人の選任は家庭裁判所の職権→混同しがちですが選任が家庭裁判所でも代理権が当然に付与されてはいません。その為法定代理人の地位にありません

 

成年後見人の規定が多く準用されています。

876条~876条の5には条項が多く並び非常に読み難いです。ですが試験対策上重要な部分は多くなく、当然に法定代理人ではない事もあって報酬や費用に関する規定を債権編の委任の分野から準用しています。

 

準用される事項

試験対策上の重要度は低いと思いますが参考までに載せておきます。

876条の2、876条の3、876条の5でつらつらと条項が並びます。それの見出しを書きだしたのが以下です。この辺りが準用される事項になります。

 

保佐人及び臨時保佐人の選任等に以下が準用される

843条第2項から第4項:(成年後見人の選任)

844条:(後見人の辞任)

845条:(辞任した後見人による新たな後見人の選任の請求)

846条:(後見人の解任)

847条:(後見人の欠格事由)

 

保佐監督人には以下が準用される

644条:(受任者の注意義務)

654条:(委任の終了後の処分)

655条:(委任の終了の対抗要件)

843条4項:(成年後見人の選任)の利害県警の有無と一切の事情について

844条:(後見人の辞任)

846条:(後見人の解任)

847条:(後見人の欠格事由)

850条:(後見監督人の欠格事由)

851条:(後見監督人の職務)

859条の2:(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)

859条の3:(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)保佐監督人財産を処分するには裁判所の許可が必要。ココ大事なポイントではないかと思います。

861条2項:(支出金額の予定及び後見の事務の費用)

862条:(後見人の報酬)

 

保佐の事務及び保佐人の任務の終了等に関して

644条:(受任者の注意義務)

859条の2:(成年後見人が数人ある場合の権限の行使等)

859条の3:(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)

861条2項:(支出金額の予定及び後見の事務の費用)

862条:(後見人の報酬)

863条:(後見の事務の監督) 

824条:財産の管理及び代表)

 

主に報酬に関して

654条:(委任の終了後の処分)

655条:(委任の終了の対抗要件)

870条:(後見の計算)

871条:後見の計算の立ち合い

873条:(返還金に対する利息の支払等)

832条:(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効)

 

管理人コメント

かなりの部分が準用されます。

その為いちいち覚えるよりも成年被後見人との被保佐人の違いに着目した方が断然良いです。

大きな違いは 同意権や代理権の付与に本人の同意が必要か?と言う事です。

また当然に法定代理人ではない事です。このことから導き出されることが多くありますのでその辺りに着目して学習してください。

 


 

 

 

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