時効の総則部分で大きなボリュームを占めるのが時効の更新と完成猶予に関する事です。
時効には期間が必要ですが、いろいろな事由により時効の期間のカウントが止まったり、リセットされたりします。
条文の解説から少し離れて、まとめて解説するのがこのページの目的です。
各条項の見出しと効果
完成猶予 | 更新 | ||
147条 | 裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新 | ○ | ○ |
148条 | 強制執行等による時効の完成猶予及び更新 | ○ | ○ |
149条 | 仮差押え等による時効の完成猶予 | ○ | |
150条 | 催告による時効の完成猶予 | ○ | |
151条 | 協議を行う旨の合意による時効の完成猶予 | ○ | |
152条 | 承認による時効の更新 | ○ | |
158条 | 未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予 | ○ | |
159条 | 夫婦間の権利の時効の完成猶予 | ○ | |
160条 | 相続財産に関する時効の完成猶予 | ○ | |
161条 | 天災等による時効の完成猶予 | ○ |
完成猶予の効果しかないもの、更新の効果しかないもの、両方の効果をもつものと3パターンに分かれているのが分かります。
また153条は効果の及ぶ者の範囲について
154条は効力を発生させるための通知が必要な条文を明記しています。
更新の効果しかない例
最重要なのは152条の承認による時効の更新でしょう。
時効により利益を受ける者が相手方の権利を認める事。
例
土地の占有者が土地が所有者の物であることを認める。
債務者が債権者に債務があることを認める。
152条 | 承認 | 承認の有った時から新たに時効期間が進行する |
注意点が152条2項にあります。
2項では、前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。と言っています。
これは、新規に権利義務が発生するわけではなく現存する権利義務を認めるのみだからです。
承認の具体例
猶予の依頼: 分かりましたもうすこし待ってもらえますか?と言えば承認の効果が発生します。
一部でも弁済した:債権の全額について認めたとされます。「今はこれしか有りません。これで勘弁してください。と言うイメージですね)
利息だけ払った:元本の承認となります。 「取立人が オウオウ!利息だけでも払ってもらおうじゃねぇか!なんてイメージでしょうか」
これ何か条文で見た記憶が無いでしょうか
125条の法定追認に近い内容です。
152条は、時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。と述べているだけです。その為何が承認に当たるかは判例によります。その時判例を知らなくても125条(法定追認)をイメージすれば試問題ないと考えています。
両方の効果を持つ例
裁判上の請求等と強制執行等です。
訴えの提起
例
土地の占有者に取得時効が完成する前に返還の訴えを起こす。
消滅時効が完成する前に債務者に弁済を求める訴えを起こす。
国の権力を通じ私法上の権利を強制的に実現する事
例
債務者が督促にも関わらず弁済しないため、強制執行により債務者の財産を差し押さえた。
これは民事執行法と言う法律に規定があり、行政書士試験上はそこに突っ込む必要はありません。
単純に裁判所に申し立てることにより差押が出来ますという理解で充分だと思います。
内容 | 完成猶予 | 更新 | |
147条 | 裁判上の請求等 | 訴訟が終了するまでの間は完成しない | 確定判決等で権利が確定し訴訟が終了したときから新たに進行 |
148条 | 強制執行等 | 手続きが終了するまでの間は完成しない | 強制執行が終了した時から新たに進行 |
完成猶予の効果しかない例
上記以外全部となります。特に大事なのが催告です。
催告
150条 | 催告 | 催告の時から6か月は完成しない |
裁判外でされた請求を催告と言います。
催告を繰り返して永久に時効を完成させない事は出来ません。
150条2項:催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
協議を行う旨の合意
私的自治が重視される民法です。話し合いで解決しましょう。と言う場合もあると思います。
そんな場合の規定です。
151条
内容 | 効果 |
協議の合意 | その合意があった時から一年を経過するまで時効は完成しない |
1年未満の協議の合意 | その期間を経過するときまで時効は完成しない |
当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされた | その通知の時から六箇月を経過するまで時効は完成しない |
● 催告では繰り返しての催告に完成猶予の効果は有りませんが、協議を行う旨の合意による完成猶予は繰り返しても完成猶予の効果があります。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。→本来の時効の完成するときから5年は協議の期間内に再度書面で合意が有れば完成猶予の効果を発生させることが出来ます。
● 催告で完成猶予している期間内に協議を行う旨の合意がされても完成猶予の効果はない。
● 協議を行う旨の合意で完成猶予している期間内に催告しても完成猶予の効果はない。
法定代理人が不在
未成年者、成年被後見人に法定代理人がいない場合にも時効が進行してしまうのは公平と言えるでしょうか?原則では単独で法律行為は出来ません。その状態で相手方が取得時効で未成年者、成年被後見人の財産を取得する。または消滅時効で権利を失う事は公平ではないと言えるでしょう。その為法定代理人が不在の場合にも完成猶予されます。
158条
内容 | 効果 |
法定代理人の不在 | 未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となる時まで時効は完成しない |
新たに法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない |
天災等の障害
161条一部書き換え
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため裁判上の請求等または強制執行等の事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
161条 | 天災等の障害 | 障害が消滅した時から3か月は時効が完成しない |
管理人のコメント
更新と完成猶予はある程度のパターンに分けられます。
効果について3パターン
更新のみ効果:催告だけです。
猶予のみ効果
猶予と更新の効果:訴えと強制、裁判所が関係しています。
効果なし:再度の催告、協議後の催告、催告後の協議
猶予期間のパターン
その事由が終了するまで:訴えと強制
1年+最大5年:協議を行う旨の合意
6か月:これがデフォルトのようです。
3カ月:災害等の障害が消滅してから
などです。条文群のボリュームは大きいですが着目点はそれほど多くないため、その違いに着目して学習すれば混同する事もなく覚えやすいのではないかと思います。
試験対策上重要と思われるポイントのみ書きだしました。取り上げなかった規定も是非合わせて学習してみてください。
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