民法7条~10条 成年被後見人 【行政書士試験対策】

民法総則

7条から10条に成年被後見人の規定が定められています。

管理人コメント

この制限は意思能力の程度により行為能力を制限して権利を取り上げることに主眼がおかれていません。制限の言葉の持つ意味から縛る方向のイメージを持ちますが、そうではなくより根源的な権利である権利能力、第3条でうたわれている私権の享有を保護するための根拠として制限がされると考えています。

管理人はそう考えて学習することにより理解が進みました。

 


民法 第7条

条文

 

解説

7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

 

後見開始の審判をするのは裁判所です。

 

また請求権の有る人も規定されています。

配偶者:これは分かりますね。基本的に一番身近にいます。

4親等内の親族:数え方は親族編で解説しますが表にすると以下です。かなり広範囲ですね。

1親等2親等3親等4親等
父母祖父母曾祖父母高祖父母
 本人の兄弟姉妹父母の兄弟姉妹祖父母の兄弟姉妹
  甥姪従妹
   甥姪の孫
曾孫玄孫

725条に親族の範囲が規定されていますがそれよりは狭い範囲となっています。

 

後見人~監督人、保佐人補助人:事理弁識能力に問題ある者が年齢を重ねた。または程度が進んだなど、あり得る話なので近くで見ている者が請求できるという事。

 

検察官:様々な状況で保護されるという事もあり得ることから検察官も規定されているのだと思います。

 

事理を弁識する能力を欠く常況にある者これは必ず覚えたい重要表現になります。

 

民法 第8条

条文

 

解説

8条 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。

 

明確ですね。

これは関わる人の権利義務に関係しますので自称、他称では効力が発生しないという事です。

 

仮に問題で「事理を弁識する能力を欠く常況にある者の法律行為は当然に取消しできる」と言ったら当然には出来ません。審判を受ける必要があります。が正解となります。

 

民法 第9条

条文

 

解説

9条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

 

原則として成年被後見人の法律行為は、取り消すことができるとなっています。同意の有無には触れていません。その為、同意の有り無しは関係ありません。後見人の同意があっても取消しが出来ます。

取消しに関しては大きく保護されています。

 

同意があっても取り消せるのはなぜか?これは欠く状況であるという事で同意を得たとしてもその意味を理解できないという事から取消し権が大きく認められています。

 

民法 第10条 

条文

 

解説

10条 第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

 

後見開始の審判に規定する原因が消滅した特は取り消さなければならない

 

一度審判を受けたからと言って原因が消滅しても保護されるわけではありません。原因が消滅すれば取り消さなければなりません。

 

関連条項集

親族編

民法 第738条

条文

 

解説

738条 成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。 

婚姻には後見人の同意は不要 単独行為です。

 

民法 第780条

条文

 

解説

未成年にも規定がありましたが、ここにも出てきます。

認知は後見人の同意は不要 未成年、成年被後見人でも同意は不要です。

 

民法 第843条

条文

 

解説

843条 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。

選任は家庭裁判所の職権

 

2項 成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、成年後見人を選任する。

かけた場合は成年被後見人、親族、利害関係人の請求か職権で選任

 

3項 成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。

成年後見人が選任されている場合でも更に成年後見人を選任することができる。

 

4項 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

未成年後見人に関しての840条の3項にも同じような条文が有ります。誰でもいいわけではありません。

 

7条では審判をすることが出来るとしています。その審判時には裁判所の職権が認められています。また事情を考慮しなければならないと義務規定が定められています。このように成年後見人の選任に関しては裁判所が強くかかわります。

 

民法 第844条~847条

条文

 

解説

844条 後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。辞任は正当な事由と裁判所の許可が必要です。勝手にやめることは出来ません。 

 

845条 後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない→後見人の無い状態を防ぐ配慮がされている。

 

846条 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。→裁判所は選任してますから解任も出来ます。

 

847条 次に掲げる者は、後見人となることができない。→法人はげられていません。後見人になることが出来ます。

 

民法 第859条

条文

 

解説

859条 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する財産上の法律行為は成年後見人が代理して行う

 

2項 第824条ただし書の規定(その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。)は、前項の場合について準用する。

 

民法 第973条

条文

 

解説

遺言 一時回復+医師2名以上の立ち合い

立ち会った医師には精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を付記、署名、押印する義務があります。

 

以上の欄をまとめて、関連条項から判断される事

 

①本人が単独で取消しも出来る。代理人も取消し出来る

②婚姻には後見人の同意は不要

③認知は後見人の同意は不要

④遺言 医師2名以上の立ち合い医師は立ち合いの旨の記載、署名、押印

⑤成年後見人の選任は家庭裁判所の職権

⑥成年後見人が欠けた場合は成年被後見人、親族、利害関係人の請求か職権で選任

⑦成年後見人が選任されている場合でも更に成年後見人を選任することができる。

⑧成年後見人の辞任は正当な事由が必要

⑨辞任する後見人が新たな後見人の請求を裁判所に行う

⑩法人は後見人になれる

⑪財産上の法律行為は成年後見人が代理して行う

 

となります。この辺りが総則に絡められて出題される傾向が高いと思います。

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