民法94条 虚偽表示 【行政書士試験対策】

虚偽表示

表意者と相手方と示し合わせて(通謀と言います)してした真意でない意思表示

 

 イメージし難いですが、何かしらの債務を負う表意者が相手方と通謀して財産を移転したことにして債務を逃れようとしている。これがイメージしやすいと思います。

このような表意者の意思表示は有効なのでしょうか?と言う事についての規定が94条です。


民法 第94条

条文

 

解説

94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

 

原則:無効

これはもう非常に明確に無効となっています。

心裡留保の様に相手方が善意だ悪意だなどと言う事はありません。示し合わせ(通謀)してますから。

当たり前の事なのですが、改めて書いてみると納得です。

 

2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

 

善意の第三者に対抗できない

悪意の第三者に対抗できる

過失は問わない。登記も問わない

 

心裡留保と同じく、登記が無くても第三者は善意であれば保護されます。

 

第三者の範囲について

 

試験問題上、第三者の範囲が問われることが多いです。

これを判例に求めることが多くありそれが難しさの一因になっています。

判例による第三者に当たるとされた例

*相手方から譲り受けた転得者

*相手方から目的不動産の抵当権の設定を受けた者

*目的物を差し押さえた相手方の債権者

*仮装された債権の譲受人

 

民法上の重要判例の要点

(大判大正9年7月23日)

第三者とは 当事者や承継人以外の者で表示目的を基に法律上の利害関係を有するに至った者

と判例にあります。

表示目的とは虚偽表示された表示と言っていいと思います。

 

過去問

第三者について、丁度いい過去問が有るので取り上げます。

 

令和4年度 問27

 

問題27 虚偽表示の無効を対抗できない善意の第三者に関する次の記述のうち、民法の規
定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。
1  AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建
物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに
対抗できない。
2  AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意
のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効
をDに対抗できない。
3  AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者C
のために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対
抗できない。
4  AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善
意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効を
Cに対抗できない。
5  AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該
債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できな
い。

引用:一般財団法人行政書士試験研究センター  令和 4 年度 行政書士試験問題 問27

 

回答と解説

1  AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは当該土地上に建
物を建築し、これを善意のCに賃貸した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに
対抗できない。

 

妥当でない

AとBの土地の関係 と BとCの建物の関係 は事実関係であり法律上の関係とは言えない。

 

2  AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bが当該土地を悪意
のCに譲渡し、さらにCが善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効
をDに対抗できない。

 

妥当

悪意者からの転得者が善意の場合第三者に当たります。

 

3  AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bは善意の債権者C
のために当該土地に抵当権を設定した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をCに対
抗できない。

 

妥当

抵当権は物権でありAとB間の仮装譲渡の目的物に法律上の利害関係を有すると言える

 

4  AはBと通謀してA所有の土地をBに仮装譲渡したところ、Bの債権者である善
意のCが、当該土地に対して差押えを行った。この場合、Aは、虚偽表示の無効を
Cに対抗できない。

 

妥当

差押により債権と目的物の関係が法律上の利害関係を有するに至ったと言える。

これが差押の無い一般債権者の場合第三者とはならない。

 

5  AはBと通謀してAのCに対する指名債権をBに仮装譲渡したところ、Bは当該
債権を善意のDに譲渡した。この場合、Aは、虚偽表示の無効をDに対抗できな
い。

 

妥当

目的物が債権であっても変わりはない。

Dは第三者と言える。

 

仮装譲渡と言う言葉が多く出てくるが、

通謀して譲渡したことにした=虚偽表示

であるという事です。

 

妥当でないものはどれかが問われていますので、肢1が正答となります。

 

平成27年度問28

 

問28 心裡留保および虚偽表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。

2 財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。

3 土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。

4 仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。 

5 金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。

引用:一般財団法人行政書士試験研究センター  平成 27 年度 行政書士試験問題 問28

 

回答と解説

1 養子縁組につき、当事者の一方において真に養親子関係の設定を欲する意思がない場合であっても、相手方がその真意につき善意、無過失であり、縁組の届出手続が行われたときは、その養子縁組は有効である。

 

こちら心裡留保に関係する肢

身分行為を優先します。

802条 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき

により無効になります。

 

2 財団法人(一般財団法人)の設立に際して、設立関係者全員の通謀に基づいて、出捐者が出捐の意思がないにもかかわらず一定の財産の出捐を仮装して虚偽の意思表示を行った場合であっても、法人設立のための当該行為は相手方のない単独行為であるから虚偽表示にあたらず、財団法人の設立の意思表示は有効である。

 

判例 最判昭和56年4月28日

設立関係者が通謀して行った虚偽・仮装の出資は、民法94条1項を類推適用し無効とする

94条に当たります。 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

 

3 土地の仮装譲渡において、仮装譲受人が同地上に建物を建設してその建物を他に賃貸した場合、建物賃借人において土地譲渡が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、土地の仮装譲渡人はその建物賃借人に対して、土地譲渡の無効を理由として建物からの退去および土地の明渡しを求めることができない。

 

令和4年度問27 肢1参照

 

4 仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。 

 

5 金銭消費貸借契約が仮装され、借主に金銭が交付されていない場合であっても、当該契約に基づく貸金債権を譲り受けた者は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であるときは、借主に対して貸金の返済を求めることができる。

 

仮装された債権の譲受人は第三者にあたります。

令和4年度問27 肢5参照

 

 

94条自体は短く簡潔ですがそれを問題に反映させると一気に難易度が上がります。

特にこの問は条文の第三者の範囲の根拠を判例に求めています。

分かりにくい問題の一つでしょう。

 

民法は各自の常識の衝突を調整するための法律と言えるでしょう。その為人の常識は人の数だけありそれを判断した判例が多数あります。この点が民法を難しくしているポイントです。

 


コメント

タイトルとURLをコピーしました