民法97条~98条 意思表示、その他の規定 【行政書士試験対策】

その他の意思表示に関わる条項です。


民法 第97条

意思表示は対面で行う場合だけではありません。その場合のルールと、意思表示後の事情変化に対応するための条文です。

条文

 

解説

(意思表示の効力発生時期等)

97条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

 

原則:到達主義

この到達はどのような状態であるかについて判例があります。

(最判平成10年6月11日)ではこう言っています

社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。

参考 民集 第52巻4号1034頁

 

内容証明が持ち戻られて保管期間経過の後に返送された案件について裁判所は、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められると判断しています。

 

3項 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

 

3項の条文は明確ですが、例外事項がほかの条文(526条)に明記があります。

 

例外=効力を有しない

①:表意者が意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき

 

②:相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったとき

 

(申込者の死亡等)

第五百二十六条 申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。

引用:民法 ”

 

民法 第98条

意思表示は特定の場合には公示でも可能です。

 

条文

 

表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示も認められています。

 

方法は、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載

官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる

 

二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない

 

民法 98条の2

受領能力の有無は各制限行為能力者の中で線がひかれています。

 

条文

 

解説

これ、分かり難いのではないでしょうか?

図にするとこんなイメージです。

表意者側から受領能力の無い者への意思表示が到達しましたから有効です。とは言えないという事になります。

 

但し書きで有効になる場合が規定されてます。

1:未成年者と成年被後見人には法定代理人がいます。→法定代理人が知れば有効となります。

 

2:意思能力を回復、または行為能力者となった場合→これは分かりやすいですね。そのままです。

98条の2に明記が無い事から被保佐人、被補助人には受領能力があるとされています。

  

受領能力の有無と追認可否の整合

20条の(制限行為能力者の相手方の催告権)では制限行為能力者には追認の催告は何の効果もありません。とされています。

 

(制限行為能力者の相手方の催告権)です。

制限行為能力者に追認の催告を行ってもなんの効果も発揮しません。

同意が必要な行為を同意なしでした場合の被保佐人と被補助人に、保護者の追認を得るべき旨の催告が出来るのみです。

 

受領能力があっても追認の催告の効果はない。何か整合が取れていない感じがしませんか?

これにはその後につながる条文があります。

 

120条~124条にかけて、被保佐人、被補助人も代理人の同意が有れば追認できるとされています。

詳しくは

民法 122条~126条 追認 【行政書士試験対策】

をご覧ください

 

意思表示の受領能力はあっても同意が必要な事項については代理人の同意が有れば追認も出来ます。

 

被保佐人と被補助人は同意が必要な事項については、表意者が本人が決めてと言ってももなんの効果も発揮はしませんが、代理人に聞いてみてと言えるという事です。聞いた結果同意なら追認出来ます。となります。

 

98条の2 例外

民法98条の2により未成年者に対する意思表示は相手方に受領能力が無いとされていますが、例外があります。

 

それが、これです。

(未成年者の営業の許可)

6条 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

 

許された営業の範囲で受領能力を有するものとされています。

 

過去問

丁度いい過去問が有りますので取り上げます。

正誤判断してみてください。


令和3年 問27

意思表示に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

 

妥当でない

前半は97条2項により正しいです。後半は97条1項により妥当ではありません。。到達状態については判例を根拠としています。

 

妥当である

98条の1項と3項により妥当となります。

 

妥当でない

97条1項により妥当ではありません。

 

妥当ではない

前半は97条3項により妥当です。

後半は526条により妥当ではありません。

 

妥当ではない

制限行為能力者だと被保佐人、被補助人も含むため98条の2により妥当ではありません。

 参考:一般財団法人行政書士試験研究センター  令和 3 年度 行政書士試験問題 問27 ”

 


 

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