民法学習で避けては通れない取消しと解除の違いを解説します。
民法には似ているけど違います。と言う用語が多数出てきます。物権、債権と民法の学習を進めるうえで先に理解しておいた方が良いでしょう。
条文による根拠
無効
民法119条にて無効は認められない事の確認がされています。
条文
(無効な行為の追認)
第百十九条 無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
引用:民法
追認しても効果が生じないんですから追認前に効果があるわけありません。
なんの法律効果も無いのが無効です。
意思表示の心裡留保や虚偽表示に無効という表現が出てきます。法律上効果を認められません。
取消し
条文
(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
引用:民法
取り消されれば初めから無効になります。
ではどのような場合に取り消せるのか? 120条2項に「瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。」とあります。
契約の意思表示の時(法律行為時)に問題がある場合に取消し出来ます。
意思表示で言うと、錯誤や詐欺脅迫です。
ただし取り消すまでは、有効となり履行の義務が発生しています。
そのため取消し出来る者はだれか?行為を確定するには?取消し後の義務は?と言ったことが119条~126条で決められています。
解除
条文ずーっと進み540条~に解除権が出てきます。
条文
(解除権の行使)
第五百四十条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2 前項の意思表示は、撤回することができない。
引用:民法
先ずは、解除権と言う物があります。と言うところからスタートです。
解除は有効な法律行為をその後の事情変更により法律行為を取りやめる事です。
その事情変更で分かりやすいのが債務不履行です。お金を払わない。渡そうとしていたものが滅失しました。なんていうことがあります。また双方の合意で解除も出来ます。
そして541条以降に取消しと同じように誰が?どんな時?解除後は?と言ったことが決められています。
表による比較
法律行為に対しての効果 | 事例 | 原状回復規定について | 時効 | |
現に利益を受けている範囲での免責規定 | ||||
無効 | 初めから無効 (追認も出来ない) | 心裡留保 虚偽表示 | あり | なし |
取消 | 意思表示により取消し (取消せば無効) | 錯誤 詐欺脅迫 無権代理 | あり | あり |
解除 | 意思表示により解除 (解除すれば無効) | 債務不履行 合意解除 | なし | あり |
注意点は、無効には時効が無い。話言葉で表現すると「効果が発生していないんだから時効もなにもそんな話じゃないよ。」と言う感じだと思います。
また解除には現に利益を受けている範囲での原状回復規定がありません。実際には回復できない状態もあるわけです。(失くした。壊した。燃えた。)なんてことです。その場合は損害賠償の余地へと繋がります。
管理人コメント
このように、比較することで注目した方が良い部分が見えてきます。
そしてここからが大事な点ですが、解除なら解除だけ考えるのではなく、その後実際どんなことがあるか?と考えることで横断的な問題にも対応できるようになります。
上の例だとこんなイメージです。
解除の要件を学習
↓
比較することで原状回復の免責規定がない事に気が付く
↓
実際回復出来ない事もあるよな。どうするのかな?
↓
その場合は損害賠償の余地があるのでは?と考える
↓
いつまでってありそう。時効との関係に気が付く
↓
取消しではどうなの?と考える
↓
おっと無権代理人の責任追及出来るじゃないですか
↓
これにも時効が有るのでは?
と言った感じです。
このように物語を展開するように学習することで横断的な問題にも対応できるようになります。
思いついたら即テキストを繰るなり検索して参考になるサイトを探したりしてみてください。
そうして覚えた知識は実際の問題を解くのに役立つはずです。
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