不動産物件変動と横断的な問題

総則編や債権編の規定が不動産の物権変動の対抗要件(登記)と並べられて出題される可能性があります。

その為177条と他の規定がどのように関係するか考えてみたいと思います。


時効と登記 令和5 問28

時効との関係を問われた問題です。

Aが所有する甲土地(以下「甲」という。)につき、Bの所有権の取得時効が完
成し、その後、Bがこれを援用した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規
定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。


1  Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、B
は、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができ
る。


2  Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、B
は、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときで
も、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。


3  Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、そ
の後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、E
に対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗するこ
とができる。


4  Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した
場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継
続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していた
などの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、
Fの抵当権は消滅する。


5  Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、B
は、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはでき
ず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許
されない

 

引用:一般財団法人行政書士試験研究センター  令和 5 年度 行政書士試験問題 問28

 

完成前、完成後

時効と不動産の登記の関係を問われたのがR5年度問28

各肢で注目してほしいのは時効の完成前と完成後で対応が全く違うという事です。

 

回答と解説

1  Bの時効完成前に、CがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、B
は、Cに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することができ
る。

時効の完成前に第三者に登記が移転しています。その後時効完成。

その場合は占有者は登記が無くても対抗できます。

これは完成前の譲受人は当事者と考えられるからです。

 

2  Bの時効完成後に、DがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、B
は、Dに対して、Dが背信的悪意者であったと認められる特段の事情があるときで
も、登記なくして時効による所有権取得を対抗することはできない。

時効完成後の第三者には本来登記が無ければ対抗できません。それは譲渡人からの2重売買と同じ構図になる為です。完成前と後で全く違う結果になる事に注意してください。

そして第三者は背信的悪意者です。

177条の想定する第三者は背信的悪意者は含まれていません。第三者ではないです。これにより登記なくして対抗できます。

さらに加えると背信的悪意者からの転得人は悪意であっても登記が無ければ対抗できません。

 

3  Bの時効完成後に、EがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、そ
の後さらにBが甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継続したときは、Bは、E
に対し時効を援用すれば、時効による所有権取得をもって登記なくして対抗するこ
とができる。

完成後の第三者には登記なくして対抗できませんが、さらに必要期間占有すれば新たに時効を援用出来ます。

 

4  Bの時効完成後に、FがAから甲につき抵当権の設定を受けてその登記を了した
場合、Bは、抵当権設定登記後引き続き甲の占有を取得時効の成立に必要な期間継
続したときは、BがFに対し時効を援用すれば、Bが抵当権の存在を容認していた
などの抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、甲を時効取得し、その結果、
Fの抵当権は消滅する。

これも完成後の第三者です。

 

5  Bの時効完成後に、GがAから甲を買い受けて所有権移転登記を了した場合、B
は、Gに対して、登記なくして時効による所有権取得をもって対抗することはでき
ず、その際にBが甲の占有開始時点を任意に選択してその成立を主張することは許
されない

これも完成後です。

また起算点を自由に選択は出来ません。

 

 

 

時効と登記まとめ

 

状態占有者の対抗の可否上の図での解説
時効完成前に第三者が現れた起算点はそのまま。時効完成後援用出来る(登記不要で対抗できる)Bは時効が完成すればCに登記があり、Bに登記が無くてもCに対抗できます。
時効完成後占有者が援用する前に第三者が現れた第三者と占有者、登記の有る方が勝つ。(登記の無い占有者は対抗できない)Bは時効が完成していますが登記が無ければDに対抗できません。
先に登記を入れた方に勝になります。

 

管理人コメント

時効と登記の関係をまとめると上記のようになります。

時効と登記の関係だけに注目すれば以上となりますが、横断的に考えるなら、さらに続きが有ります。

上の図でCに当たる者(完成前の第三者)は自身の所有権をただ時効によって失うのを待つだけなのでしょうか?

CはBに権利を承認を求めることが出来ます。承認されれば更新されます。また裁判上に請求がされれば猶予され判決が確定すれば更新事由となります。

 

BとC、BとDいずれの関係でも取得した権利を行使しなければ保護されない。権利の上に眠る者は保護されない事の現れです。

 


コメント

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